JLLの新研究は、スマートシティ技術を従来の「イノベーション支出」ではなく資本配分(capital allocation)として財務モデル化した。対象都市におけるReturn on Investment(ROI)は70%から最大300%に及び、エネルギー・人流(footfall)・廃棄物・デジタルインフラ最適化などのユースケースを通じて、2037年までの10年間で地域経済に数十億ドル規模の成長をもたらすと試算されている。本分析は5都市・7ユースケースを一貫した費用便益で評価した初の試みとされる。
技術と都市によって費用便益は大きく異なる。ROIはRiyadhの一部ユースケースで300%に達する一方、New Yorkでは運営コストが高く70%を超えにくい。投資回収期間は、ソフトウェア中心の技術(seamless journeys)で1年強、ハードや電力資産最適化を伴う技術(AI for energy analytics)では7年近くに及ぶ。RiyadhやHong Kongの交通ハブ・ナビゲーション最適化は初期投資が小さく2年で回収され、DubaiのHVACや建設資源最適化は6年超かかる一方で数十億規模の節約を生む。内部収益率(IRR)は回収期間が短いほど高く、長いほど年間リターンは低いが最終的な果実は大きい。
スマートシティ技術は10年間で地域GDPを0.8%から6%押し上げる潜在力を持つ。Londonでは最低で0.8%(約$8 billion)、Dubaiでは最大6%($6.9 billion)、Riyadhでは3%(約$16 billion)を追加しうる。効果はCommerce、Development、Health、Productivity、Sustainabilityの5つの経済価値ストリームに分けて分析された。
スマートシティ技術は都市固有の課題に応じて価値ドライバーが異なる。LondonとHong Kongでは大気汚染と高いエネルギー価格から持続可能性が、New Yorkでは高い平均賃金を背景に生産性が主要ドライバーとなる。RiyadhとDubaiでは通年の高温対応から持続可能性・健康・商業の成果が重視される。地域GDP効果を織り込むことで、スマートシティは孤立したイノベーション事業ではなくインフラ投資のように扱え、都市指導者は経済目標設定・都市特性のベースライン化・複数リスクプロファイルへの投資・スケーラビリティ実証・能力の制度化という5段階のフレームワークで投資家を呼び込める。
本レポートは、投資家が都市リーダーと協働してスマートシティ展開を実現するための5段階のプログラムを提示している。第1段階は経済目標の明確化で、資金が地域経済全体でどのように価値を生むかを問うべきとする。第2段階は都市の中核的な社会経済特性のベースライン化、第3段階はリスクプロファイルを分散した投資、第4段階はパイロットプロジェクトからのスケーラビリティの証明、第5段階はスマートシティ能力の制度化である(A five-step framework)。
ニューヨークではAIエネルギー分析が8億ドル($800m)を生むものの、エネルギー価格が比較的低いため最大のGDP押し上げ要因にはならないとされる。代わりに高給与労働者の時間を節約する技術のほうがスケールしやすいと分析している(Step 2)。ドバイでは最も有望なユースケースがAIエネルギー分析とスマート建設だが、いずれも回収に5年超を要し、リスクが高いと指摘される。これを初年度から大きな収益を得られる案件で相殺しつつ、シームレスな移動、市民体験プラットフォーム、屋内空気質モニタリングといった小規模案件へ同時投資することが推奨されている(Step 3)。
分析はユースケース主導のモデルに基づく。政府・学術・産業の文献を用いて各ユースケースが投資家に収益をもたらすメカニズムを特定・モデル化し、人口密度、労働力規模、都市圏面積、平均給与、エネルギー価格などを独自の財務モデルに投入して地域GDPへの影響を算出している。複数ソリューションを用いたスケール展開をマッピングする点が本調査の独自性とされる(About the research)。地域産出の指標としては従来のGVAではなくGDPを採用し、税・補助金を投資の一形態として含めている。対象5都市がいずれも自国経済にとって重要であることも、地域GDPを適切な指標とした理由である(End note)。
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