カナダの住宅ローン市場では、全国の90日以上延滞率が2025年Q4に0.24%となり、前年同期の0.21%から上昇した。これはパンデミック後の低水準からの上昇傾向が続いたもので、0.24%は2021年Q1以来(記録上の最低水準だった時期)の高さである。一方で、住宅ローン残高は2025年12月に2.4兆ドルを超え、過去最高に達した。(Highlights, Borrower-level risks)
延滞率の上昇は特定地域に集中している。トロントは前年比45%増(0.20%→0.29%)、オンタリオ州全体は35%増(0.20%→0.27%)、バンクーバーCMAは31%増、アボッツフォード・ミッションCMAは32%増、BC州全体は24%増(0.17%→0.21%)となった。バリーとウィンザーも45%超の伸びを示した。一方、セントジョンズ、サスカトゥーン、ケベックシティは前年比20%超の低下となった。州別ではサスカチュワン0.41%、レジャイナ0.43%が高水準にある。(Borrower-level risks, Table 1)
Equfor分類による高リスク消費者の債務は、2025年Q4時点で長期トレンドを30%上回った。自動車ローン、クレジットカード、LOCの90日以上延滞率はいずれも前年比で上昇し、これらは住宅ローン延滞の先行指標とされる。ただし上昇ペースは鈍化しており、LOCは15%(前年19%、2年前57%)、クレジットカードは5%(前年10%、2年前15%)、自動車ローンは4%(前年9%)となった。住宅ローン保有者と非保有者を比べると、非保有者の延滞率が平均的に高い一方、上昇率は住宅ローン保有者の方が大きい。(Borrower-level risks, Figure 1, Figure 2)
2025年は既存ローンの更新が市場活動を主導し、更新件数は2026年に減少が見込まれる。5年物満期を迎える借り手は2025年の更新者と同様の金利ショックに直面する可能性がある。保険付き住宅ローンの活動が増加し、新たな適格ルールにより初回購入者らが保険加入しやすくなった。全体として労働市場の軟化と高金利への累積的な影響で借り手ストレスは高まり、システムは金利感応度が増しているが構造的には安定を保つとされる。今後は更新サイクル、労働市場、保険付きローンの動向、ノンバンク貸し手の実績が注視される。(Highlights, Key trends to watch, Mortgage risk rising)
貸し手別の90日以上延滞率では、MIEs(モーゲージ投資会社)が2025年Q3に1.96%へ上昇し、パンデミック時の最低値0.69%のほぼ3倍となった。MIEsはトロントへのエクスポージャーが高いことが延滞率悪化の一因とみられるが、住宅ローン残高に占めるシェアは1%にとどまる。特許銀行は2025年Q3に0.24%とパンデミック前基準に並び、2025年Q4は0.25%となった。信用組合は最も低い延滞率を維持し、パンデミック前基準を0.1ポイント下回る水準が2025年を通じて続いた。その他ノンバンク(MFC・信託・保険会社等)はパンデミック前基準を再び上回り、上昇トレンドはMIEsに次いで速い。
特許銀行は戸建て住宅向けの貸倒引当金を2024年下半期比で25%増やし、住宅ローン残高に対する引当金比率は0.11%から0.14%へ上昇した。コンドミニアム向けは同期間で39%増、多世帯セクター(集合住宅の建設ローンを含む)は51%増となり、プロジェクトのキャンセル増加が背景とされる。
更新圧力は2025年にピークを迎え2026年初も高止まりするが、満期を迎えるローン量は2026年から2027年にかけて大きく減少する。2026年に更新する借り手は2025年比13%少なく、金利は2025年1月の約4.8%から2026年1月には約4.2%へ低下した。ただしHousing Market Outlook 2026は2026年半ばに金利が再上昇する可能性を指摘している。規制対象貸し手のストレステスト(2ポイントの支払い増に耐えられること)が更新を支えたとみられる。
無保険組成では償却期間25年超の割合が2024年Q4の65%から2025年Q4は62%へ低下した。TDS45%超の高負担割合は2022年Q4のピーク36%から2025年Q4は30%へ低下したが、2020年Q4の21%は依然上回る。HELOCの90日以上延滞率は2025年Q4に0.16%で、Q4 2024・Q4 2023と変わらず安定している。
2026年3月時点の全国失業率は6.7%で、近年の水準より高いものの長期的にみれば比較的低い水準にある(Figure 5)。失業率は住宅ローンシステムの健全性を測る重要指標であり、失業率と延滞率(CBA計測)は1990年から2025年末まで強い相関を示している。足元では延滞率は失業率との通常の関係よりわずかに低い水準にある。
家計の債務対可処分所得比率は2025年Q4に173.3となり、前年の171.8から上昇した。これは平均して可処分所得1ドルに対し1.73ドルの債務を負っていることを意味する。増加幅は小幅ながら、2022年Q3以来の四半期ベースで最大の前年比上昇であり、2023年以降続いた緩やかな低下傾向からの転換となった。上昇の背景には賃金の伸び鈍化を含む労働市場の軟化がある。
2025年に信用スコアが改善した住宅ローン保有者は悪化した者を上回った。一方、低信用スコア(600未満)の借り手が保有する住宅ローン残高の割合は2022年Q4の1.1%から2025年Q4に1.7%へ上昇した。新規貸出でみると同割合は0.6%から0.4%へ低下しており、残高(ストック)と新規(フロー)で異なる動きがみられる。2024年下半期の保険適格ルール緩和により、初回住宅購入者は30年の付保ローンや購入上限額の100万ドルから150万ドルへの引き上げなどが可能となった。その結果、2025年Q4には特許銀行が初回住宅購入者に延長したローンの54%が付保となり(従来は40%台半ば)、付保新規ローンの3分の2が25年超の償還期間を持ち、前年の2倍超となった。
借り手はより短い期間や変動金利へシフトし、システムの金利変動への感応度が高まっている。マクロ経済の不透明感から3年以上5年未満の固定金利が根強い人気を保ち、2026年2月には延長ローンの35%を占めた。2025年Q4以降、特許銀行の変動金利が固定金利を下回る状況が2022年以来初めて発生し、2026年2月には変動金利が42%と最も人気の選択肢となった(Figure 6)。伝統的な5年固定は同月11%にとどまった。労働市場の軟化、付保商品へのシフト、短期化が相まって金利感応度の高いシステムを形成する一方、新規貸出の審査厳格化が下支えとなっている。
2026年1月時点で住宅ローン残高は2.4兆ドルに達し、前年比4.8%増となった。この伸びは2024年を上回り、2025年平均と一致する一方、歴史的平均は下回っている。オリジネーション(新規・借換・更新時の乗り換えを含む)のシェアは、チャータードバンク54.8%、信用組合16.7%、モーゲージ投資エンティティ(MIE)4.5%となっている。
2025年下半期の総オリジネーションは前年比9%増で、保険付きが35%増、非保険付きが4%増となり、保険適格ルールの変更がより多くの持ち家所有者の保険付きローン取得を可能にしたことを反映している。物件購入向けは3%増だったが、非保険付きの購入向けは7%減の670億ドル、保険付きは37%増の300億ドルとなった。借換の主な理由はリフォーム資金(28%)で、次いで債務整理(22%)、返済負担軽減(14%)が続く。同一貸し手による借換の承認率はQ2 2021のピーク98%からQ4 2025には79%へ低下し、Q3 2025の70%(2016年以降最低)から回復した。
Big 6銀行の残高シェアはQ3 2024からQ3 2025の間に0.6ポイント上昇した一方、オリジネーションシェアは6.9ポイント低下し、基準年効果を反映した。2024年11月のOSFIによる更新時ストレステストの再審査不要化を受け、非保険付きスイッチは2024〜2025年下半期比で34%増加した。信用組合のオリジネーションはQ3 2025に前年比28%増の236億ドルとなり、2年連続の小幅減少を反転させた。「その他の貸し手」はQ3 2025までの4四半期で46%多くオリジネーションを行い、保険付きスイッチが倍増して66億ドルに達した一方、同一貸し手による更新は11%減少した。
更新の波が業界を牽引しているが、更新件数は2026年に2025年比で減少する見込みで、2025年の更新額はピークを表す。上位25 MIEの運用資産はQ3 2025に115億ドルとなり前年比8.8%増で、2022年以来最速の伸びを示し、全体の住宅ローン債務の伸び(4.8%)を4四半期連続で上回った。MIEの残高シェアは1.3%、オリジネーションシェアは4.7%。MIEは差し押さえ率やステージ3減損の前年比低下でリスク水準が改善したが、これらは過去5年比で依然高水準にあり、貸倒引当金も2024年以前の水準を上回っている。
本レポートはQ4 2025時点のカナダの住宅ローンおよび信用商品の動向をまとめている。住宅ローン延滞率はQ4 2024の0.21%から上昇し、平均住宅ローン返済額もQ4 2024の$1,784から増加した(Quarterly Data Snapshot、Equifax Canada)。住宅ローン残高総額はJan 2025の$2.296 trillionから拡大している(Quarterly Data Snapshot、CMHC calculations)。
住宅ローン保有者と非保有者の非住宅ローン延滞率はいずれも2024年Q4から2025年Q4にかけて上昇した。住宅ローン保有者では自動車ローンが0.43%から0.49%、LOCが0.35%から0.41%、クレジットカードが0.72%から0.76%へ上昇した。住宅ローンを持たない消費者では自動車ローンが3.17%から3.50%、LOCが1.36%から1.52%、クレジットカードが2.18%から2.28%へ上昇した(Quarterly Data Snapshot、非住宅ローン延滞率表)。
チャータードバンクの新規住宅ローンに占める金利タイプ別の割合は大きく変動している。変動金利の割合はJan-20の7%から2021年後半には55%前後まで上昇した後、2023年には一桁台まで低下し、その後再び上昇した。直近ではDec-25に45%、Jan-26に42%、Feb-26に42%となっている。一方、5年以上の固定金利は近年低下傾向にあり、Feb-26では11%となった(Quarterly Data Snapshot、新規住宅ローン構成比表)。
延滞・返済負担の各指標が前年から上昇し、新規住宅ローンでは変動金利志向が再び強まる動きがみられる。信用悪化は住宅ローン保有者・非保有者の双方で観察されている(Quarterly Data Snapshot)。
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