カナダの住宅供給ギャップは前年評価からほぼ横ばいである。現行予測に基づくと、今後10年間で年間18.7万〜23.8万戸の長期的な供給ギャップに直面する。2036年までにプレパンデミック期(2019年)の住宅取得能力を回復するには、年間約41.7万〜46.9万戸の住宅が必要とされる(Highlights, Canada needs more housing)。
全国推計は市場間の重要な差を覆い隠している。トロントでは住宅価格の低下により取得能力が改善し供給ギャップが縮小した一方、コンドミニアム市場を中心に新規建設が急激に弱まっている。カルガリーは旺盛な建設活動によりギャップをほぼ半減させた。エドモントンは建設が人口増加に追いついており、測定可能な供給ギャップはない。一方、オタワは取得能力の悪化により、モントリオールは将来の建設が必要量に届かない見込みにより、それぞれギャップが拡大した。バンクーバーは横ばいだった(Canada needs more housing, Table 1)。Table 1によれば、供給ギャップ(High基準)はモントリオール56,000戸、オタワ27,000戸、トロント26,000戸、バンクーバー7,000戸、カルガリー5,000戸、エドモントン0戸、カナダ全体で238,000戸となっている。
バンクーバーの供給ギャップは2026年に安定を維持した。賃貸開発への傾斜が進み、賃貸アパートは2026年の着工の約60%を占め、2016年の20%未満から大きく上昇し、2025年比で約36%増加した。自治体のインセンティブや賃貸特化型ゾーニング政策が賃貸事業の採算性を支えている。一方、コンドミニアムのアパート着工は2026年上半期にさらに40%減少し、2011年以来最も弱い上半期となった。現行の着工ペースは、2036年までにプレパンデミック期の取得能力を回復するために必要な水準を5,000〜7,000戸下回っている(Highlights, Rental housing, Weak condominium construction)。
カナダの住宅市場は新たな局面に入っている。人口増加の鈍化、賃貸市場の均衡化、取得能力の改善、多くの都市での完成戸数の高水準がみられる。供給拡大は建設中プロジェクトが主導し、新規プロジェクトの立ち上げは多くの市場で弱まっている。持家向け住宅、特にコンドミニアム建設が供給面の課題に直面している。今後2年は移民目標の引き下げなどで人口増加が鈍化し、住宅需要は弱まる見込みだが、需要が再び強まる際に十分な供給がないことが主要なリスクとされている(Canada needs more housing, Figure 1, Need for more supply)。
カナダは2036年までにパンデミック前の住宅取得可能性を回復するため、年間187,000〜238,000戸の住宅供給ギャップに直面している。現在の建設見通しでは、今後10年間で取得可能性を改善するために必要とされる量の約半分にとどまり、およそ2倍の建設が求められる(Canada's housing challenge persists)。人口の中期見通しは緩やかで、Population Index(2025=100)はカナダ全体で2030年に102、2036年に107とされる。Toronto(2036年116)が最も伸び、Montréal(同103)は最も緩やかとされる(Figure 2)。
主要7市場では賃貸への転換が鮮明で、purpose-built rentalが集合住宅着工の3分の2を占める。賃貸着工は2019年の28,877戸から2025年には69,475戸へ増加した一方、分譲集合住宅(condo)は2023年の57,130戸から2025年に34,259戸へ減少した(Figure 3)。空室率上昇と賃料上昇の鈍化により賃貸市場は過度の逼迫から均衡へ向かいつつある一方、Toronto、Vancouver、Ottawa、Montréalでは分譲・戸建て系の建設が急減し、供給ギャップは持ち家市場に集中しつつある(Figure 3)。
Edmontonは測定可能な供給ギャップがない数少ない主要市場で、建設が需要に追随し取得可能性を維持している。2026年上半期の総着工は前年比20%減少したが歴史的平均を上回る水準を維持。集合住宅の完工は30%増、建設中戸数は過去最高の17,900戸に達した。分譲集合住宅着工は前年比14%増で、集合住宅着工の約4分の1(2023年の約3%から上昇)を占めた(Highlights, Market shifts, Condominium construction remains resilient)。Calgaryでは供給ギャップが縮小し、今後10年で年間4,000〜5,000戸の追加が必要とされる。2026年上半期の総着工は20%超減少、完工は9%増(集合住宅完工は約32%増)。purpose-built rentalの着工は30%超減少したが全着工の約60%を占め、分譲集合住宅着工は4%増、完成済み未販売在庫は59%減少した(Supply gap narrows, Rental construction slows)。
両市とも着工の急拡大局面から、過去の建設ブームで着手された案件を引き渡す局面へ移行している。賃貸市場では空室率上昇、リース活動の鈍化、経済的不確実性を背景に開発業者が慎重になり、賃貸着工が減速する一方、相対的に手頃な持ち家需要は底堅い。長期的リスクは賃貸の過剰建設よりも、需要回復時に選択肢が不足する分譲・戸建て系住宅の供給不足にあると指摘されている(Figure 3, Market shifts, Rental construction slows)。
本レポートはToronto、Ottawa、MontréalのCMAを対象に住宅供給ギャップを分析している。いずれの都市も2036年までに2019年(パンデミック前)水準のアフォーダビリティを回復するには、現状を大きく上回る住宅着工が必要とされる。Torontoは今後10年で年間着工を少なくとも50%増やす必要があり、持続的な改善には毎年21,000〜26,000戸の追加着工が求められる(Supply gap narrows marginally)。Ottawaは年間22,000〜27,000戸(Housing supply remains high)、Montréalは年間42,000〜56,000戸の追加着工が必要とされる(Supply gap remains large)。
Torontoでは住宅価格の下落と賃料上昇の鈍化でアフォーダビリティが足元で改善したが、これは持続的な改善ではなく市場軟化を反映したものとされる(Supply gap narrows marginally)。一方、Ottawaでは住宅ローン金利上昇と所得の伸び鈍化によりアフォーダビリティが悪化しギャップが拡大した(Housing supply remains high)。Montréalではコスト対所得比率が34%から48%へ上昇し1990年代以来の高水準となり、供給ギャップが拡大した(Supply gap remains large)。
3都市とも賃貸住宅(purpose-built rental)が新規供給の主軸となっている。Torontoでは2026年上半期に賃貸集合住宅の着工が2025年比で82%増加し、増加した唯一のカテゴリーで、1994年以来初めて分譲を上回った(Rental construction drives new supply)。Ottawaでは2026年に賃貸が着工の54%、完成の64%、建設中戸数の69%(前年53%、2023年30%)を占めた(Rental housing dominates)。Montréalでは2026年上半期に賃貸が全着工の記録的な86%を占めた(Rental construction increasingly driving new supply)。
所有向け住宅の供給は依然低調である。Torontoの戸建てフリーホールド着工は20年超の減少で過去最低となり、City of Torontoの2026年上半期の分譲着工はわずか156戸(過去10年平均は年約7,000戸)にとどまった(Ownership housing faces the greatest supply gaps)。Ottawaでは分譲着工が前年比49%減、賃貸は3%増(Rental housing dominates)。分譲建設は弱いプレセールや資金調達難で制約され、各都市とも所有向けのアフォーダビリティ課題が残る見通しである。
モントリオールでは、過去10年間に持ち家向け新規着工の60%超を分譲コンドミニアムが占めてきたが、2026年にはその割合が40%に低下した。分譲着工は数年来の低水準にとどまり、特にダウンタウン・モントリオールで新規プロジェクトが減少している。新規コンドミニアム価格は同等の再販市場物件より最大40%高い。ハリファックスでは賃貸住宅が市場を支配し、全住宅着工の78%、建設中戸数の89%を占める。
モントリオールでは、分譲需要の減退により新規コンドミニアム着工が減少している。図1(Starts, by Tenure, Montréal CMA)によると、2026年Q2の分譲着工は1,767戸で、賃貸は24,176戸と大きく上回っている。ハリファックスでは、記録的な集合住宅の完成が供給を増やし、空室率の上昇と家賃上昇の緩和に寄与した。ただし低所得世帯にとっては新しい物件が手頃でなく、負担能力の課題が残る。持ち家分野でも2019年以降の価格上昇に所得が追いつかず、新築の多くが賃貸であるため所有物件の供給は細っている。
モントリオールでは、建設コストと市場が吸収できる価格のバランスに苦しむ開発業者の事業成立性の課題により、コンドミニアム建設は当面弱含みが続き、持ち家供給は限られると見込まれる。ハリファックスでは建設中戸数が2026年上半期に過去最高の14,400戸に達し(2021年は5,900戸未満)、当面は供給増を支える。しかし資金調達・建設能力に加え、水道・排水などのインフラ容量の限界が開発活動を圧迫し、将来の供給拡大は鈍化する可能性がある。図1(Starts per 10,000 Population, Halifax CMA)では、人口1万人当たり着工は2024年の65から2026年の40へ低下している。
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